当事者がADHDに勧めたい在宅勤務・フレックスも、実は「制度だけでは不十分」な部分がある
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在宅勤務やフレックスタイムは「自分のペースで働けて楽」と思われがちですが、自由がある分自律も必要な働き方とも言えます。発達障害であるADHDにも、自律が求められるこの働き方はできるのでしょうか?
ADHDと診断されている私も、休職前に在宅勤務・フレックスタイムを経験していました。ADHDの弱点を回避できる素晴らしい制度だとは思いますが、やはり単純に「楽になる」とは限らず「工夫が必要な部分」があると感じました。
発達障害は個人差もありますが、ADHD特性を持つご本人や周囲の方への参考になればと思い、今回の記事を書きました。
省エネモードで温存できる在宅勤務 #
オンラインでの会議などがない限り、誰にも見られていない状態なので、やることさえできていれば他のことには特に気を使う部分はありません。
私の場合、俗に言う風呂キャン(お風呂に入らない)だったり、寝間着で一日過ごす、メイクしないどころか顔も洗わないという生活。そう聞くと「だらしない」という印象を持たれるかも知れません。
ただ、これは裏を返すと、「人に見られている」という状態そのものが、私にとって普通の人の何倍もエネルギーを消耗するものだったということでもあります。身だしなみの部分以外にも言えます。
出社しているときは、常に誰かが同じ空間にいる状態です。特別サボっているわけでなくても、「見られているんじゃないか?」「何か変だと思われているんじゃないか?」という感覚だけで、ずっと気疲れしていました。在宅勤務になると、そのプレッシャーから少し解放されます。清潔感は失われるものの、それ以上に「誰かが近くにいることの消耗」の方が、私にとってはダメージです。
つまり在宅勤務は、「サボれるから楽」なのではなく、「常時人がいる状態から降りられるから楽」なのです。
食事・運動には注意が必要 #
私の場合、お菓子を食べ続けながら勤務したり、昼食代わりにチョコレートやスナック菓子を食べることもありました。食事は1日3食きちんと取り、お菓子類は家になるべく置かないようにするなど、きちんと決め事をしないとどんどん食生活が乱れ、体調を崩す原因になります。
また、子どもの送迎を家族に任せられる日は家から一歩も出ないという状態でした。運動までいかなくとも、例えば外を歩いたりすることが大事です。家から出たくない・ただの筋トレなどは退屈で合わないという場合は、運動できるようなゲームがおすすめです。私もそうですが、何か1つを日課にすると日に日に新鮮さがなくなり飽きてしまう人もADHDには多いものです。いくつか身体を動かす手段を持っておくといいです。
時間に縛られないフレックスタイム制 #
フレックスタイムは、勤務時間をずらすことができる働き方です。その日の体調や集中力の波に合わせることもある程度可能になります。
ADHDが苦手な「定刻通り」を避けられる #
一番大きかった恩恵は、出社や退勤が定刻ではないことです。
ADHDの方は、衝動性や不注意の影響で「あと何分で出発しなければならないか」を把握しにくい傾向があります。そのため、準備に時間がかかりすぎたり、直前まで別のことに集中してしまい、結果的に遅刻につながります。
(引用元:ADHDと時間感覚|不正確さの原因・日常生活への影響と対策を解説 「シンプレ訪問看護ステーション」)
私も朝起きてるにも関わらずなぜか時間が過ぎてしまい、定刻に出社できません。遅刻の理由を考えて一旦謝ってからでないと仕事が始められない、という毎朝が本当に地獄でした。フレックスタイム制であれば、出社時刻が決まっていないため、遅刻という概念が有りません。
フレックスでは、一般的な始業時刻より遅く仕事を始められるだけではなく、早く始めてもいいのです。私も以前の勤め先では、朝出かける前にまだ時間の余裕があると思ってゲームを始めてしまい、結果無断欠勤になったこともありました。フレックスであれば、時間があると思えばその瞬間から働き始めることも可能になります。
また、終業時刻も決まっていないため過集中とも相性がいいです。私は切り替えが苦手で、一旦業務に集中すると時間で区切ることが難しくなります。時間だからと中途半端でも切り上げるという必要もなく、思う存分働いて進行できた分だけ翌日はゆっくり始業できます。
しかし、これはデメリットにもなり得ます。ちょうどよく過集中から解放されればいいのですが、集中しすぎて食事や睡眠を後回しにするほどのものであれば、体調を崩したりエネルギーが枯渇して燃え尽きるリスクなども隣り合わせです。
過集中に潰されない「終業」対策を #
おすすめの対策は、仕事を終われるタイミングの終業ポイントを2つ用意することです。
まず、1つ目のポイント。「ここの時間までは働く」という目安を決めてアラームを設定します。例えば18時。ここでスパッとやめるのが理想ですが、仕事なのでそううまくいかないもの。なので、この30分後に再びアラームが鳴るよう設定しておきます。キリがついたらそこでその日の業務は終了させ、うっかり違うことを始めてしまわないように30分後のアラームが終わりであることを再度教えてくれます。
「今日は集中しているから仕事を続けたい」という日もありますよね。そういうときは、この1つ目のポイントのアラームをすぐ止めてください。2つ目の終業ポイントが制御してくれます。
では、2つ目のポイントです。「いくら何でもこの時間には切り上げないと」という時間、例えば22時と決め、その時間にPCの電源が落ちるように設定します。ただ、ここで問題になるのが、集中してるときに突然電源が落ちるということ。このストレスを防ぐために、電源が落ちる30分前にアラームをセットしておくのです。
自分の場合は、1つの終業ポイントでは不十分で、仕事を切り上げられずに深夜になっているという日が非常に多かったです。2つ目の終業ポイントをつくることで「諦め」になります。
稼働時間を可視化するエクセルを自作 #
また、ADHDは時間感覚が不正確なことから、そもそも「今月、あと何時間働けばいいのか」「そのためには今日何時間働いておくべきか」という時間計算そのものが苦手というのも問題です。フレックスは自由度が高い分、自分で時間を管理する前提の制度なので、この苦手さがそのまま浮き彫りになります。
頭の中だけで「今日はあと何時間働くか」「逆算すると何時に仕事を終わらせないといけないか」を考えようとすると、途中で分からなくなってしまいます。仕事なので、単純に時間数をこなせばいいというわけではなく、時間と業務が紐づいており、特に低ワーキングメモリの場合にはその両方を検討するリソースを割くのが難しいです。
そこで私はエクセルで自作のシートを作成し、毎日出勤時刻・退勤時刻を入力していくと、残り時間を自動で表示できるようにしました。フレックスタイム制はその企業によって週で区切られていたり、締め日が異なったりとまちまちです。私の場合は月の稼働時間が定められていたので、まずはその時間が基準になります。締め日までに何日稼働出来るかを自動計算し、月あたりの必要稼働時間の日割りを算出します。なので、「この日は絶対に休む」という日も予め決めてエクセルに入れておくといいです。
頭の中の計算をエクセルに肩代わりしてもらうことで、「あとどれくらい」という感覚を都度確認できるため、時間の見積もりを間違えて働きすぎたり、逆に締め日に稼働時間が足りなかったということももちろんなく、業務を分配して集中することができました。
エクセルが示してくれた精神的「限界」 #
説明した通り、このエクセルには、締め日までにあと何時間稼働が必要かを計算し、それを残り日数で日割りした時間も表示させていました。これは日々の目安を掴む目的でのみ作成したものでした。
でも、ある時期から、どんどんその日割りの数字が物理的に不可能な時間になっていきました。
それ以前から休職自体は主治医から何度も勧められていました。それでもすぐには決断できず、感覚では「まだやれる」「休職するにしてももう少しやってから」と、何度か通院を重ねる中で、ようやく休職を決意できたという経過があります。決断した頃には、自宅でPCを開いてタイムカードを押すという、たったそれだけの操作すらできないくらい、精神的に参っていました。
エクセルによって可視化された時間が、休職を決意する一つの目安になりました。
「在宅勤務だから無理せず続けられる」というイメージがある一方で、実際には、通勤がない分、限界に気づくタイミングが遅れることもあるのかもしれません。誰かに直接会わない分、自分の状態を客観視する手がかりが、エクセルの数字くらいしか残っていなかった、とも言えます。
【まとめ】制度としては良い面が多いが、工夫が必要 #
在宅勤務もフレックスも、ADHDの特性が仕事と衝突してしまう部分をやわらげてくれると感じました。私は結果としては休職になっています。しかし、これらの制度がない会社ではもっと精神を削って退職を繰り返していた過去があり、今回は退職ではなく休職でこの恩恵を受けられる環境を守りたいと思えたのがその証拠です。
ただ、やはり「制度として自由度が高い」ことそのものが、ADHDにとって単純に良いとは言い切れないと感じています。
- 在宅勤務
見られるプレッシャーからの解放↔生活が乱れがち - フレックス
遅刻をしなくて済む↔時間管理を自分でおこなう
どちらも、制度をそのまま使うだけではうまくいかず、自分の弱点を補うための仕組み(エクセルでの可視化など)とセットにして初めて機能する、という結論でした。在宅勤務やフレックスを検討している当事者の方には、「制度が向いているか」だけでなく、「自分に合った運用の工夫を別に用意できるか」も合わせて考えることをおすすめしたいです。
免責事項 #
本ブログで提供する情報は、運営者である私個人の体験や考察に基づくものであり、医学的なアドバイスや診断を提供するものではありません。
ADHDの症状、診断、治療、薬の服用などに関しては、必ず医療機関を受診し、医師や専門家の指示に従ってください。
本ブログの情報を参考にされる場合は、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。